♯01 映画【her 世界でひとつの彼女】

Netflixで公開中の映画【her 世界でひとつの彼女】を観た。

インターネットを通してできたお友達に教えてもらったからだ。

感想とか色々書いてみようと思う。

ネタバレも含みますのでご注意を。

 

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ざっくりとあらすじを。

主人公のホアキン・フェニックス演じるセオドアは手紙の代筆行をしている。それもパソコンに向かって話しかけるだけで手書きの文章が画面上に打ち込まれていくというハイテクぶりから時代背景はもう少し、というよりは2020年を生きる私たちがこういった経験をすることがあるのか、ないかも。くらいの近未来。妻との離婚調停中に遊び程度にダウンロードした高性能な人工知能OS(今でいうsiri的な存在、でも喋り方は人間そっくりで感情表現も豊か)と恋に落ちる。そのOSはセオドアに名前を聞かれ、その場で自分にサマンサという名前を付ける。音声は男女どちらかを選択できセオドアは女性を選んだ。(これほとんどの人が異性選ぶんじゃなかろうか)。サマンサはインターネット上に存在しているため、もちろん実体はない。あるのは音声のみ。

 

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まず最高に素晴らしいのは映像。セオドアの働くオフィス、部屋の家具、家電、PCの中身、地下鉄の路線図etc...映像のカラートーンに無駄がないというか、統一感。全体的に淡いパステル調の映像運びが心地よい。これはカナダのアートデザイナーであるジェフ・マフェクトリッチが監修しているそう。ジェフのデザインしたポスターかわいい欲しい。

 

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そして人工知能という実体のないものに対する恋愛感情。これに関して私個人としては、あり得ないかなという印象。セオドアとアマンダの会話は本当に自然で時に情熱的でもあるのだけれど、自分だったらどこか冷めた目線で俯瞰して考えてしまうと思う。どうせ人口知能でしょ、私が喜びそうなことをインターネットから拾ってきて言ってんのね。みたいな。デバイスの向こう側に生身の人間がいると思えば恋愛関係になることもある思う。ただ人工知能にはここまで感情移入できないかも。実際体験していないからなんとも言えないけど。百聞は一見にしかず。でもまあ、意外と現実主義なんだなと書きながら自分でも思った。

 

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さらに人間というか生き物として、触れたいという衝動が満たされないっていうのも寂しい。お互いに想い合っていると確信している相手が居るのに触れられないなんて、しかも永遠に。そんなもどかしいことあるかいな。あと、話は少しズレるけど自分に最愛の人が居るとして、その人の脳みそを人口知能のようにインターネットの世界に溶け込ませて、声も喋り方の癖もそのままにしちゃうとする。最初の数分くらいは満たされるかもしれないけれど、そのうちあの人だけどあの人じゃないって逆に寂しくなっちゃうだろうなとも考えた。クローン技術とかもそういった点で受け入れられないタイプなのかも。人口知能やクローンと恋愛するのは難しそうという感想。皆さんはどうなんでしょうか。最愛の人、人工知能やクローンにしたいですか?(サイコパスみのある質問)

 

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作中で強烈に共感したのは「恋は社会的に許された狂気」という一文。恋愛って狂気。脳内のドーパミン量が増えて注意力散漫、冷静な判断が困難になって日常生活に支障(活力になる場合もあるけど)。これって酒やギャンブル、オンラインゲームなどの人生でハマってはけないものランキング同率一位を軒並みかっさらってくような依存性の高いものであることは言わずもがな。恋は盲目、あばたもえくぼ、胸キュンは軽い狭心症だっていうし。胸の高鳴りも脳内の麻薬物質的なものの作用だと思うと少しは冷静になれるかもしれないけれど、依存性が高いことは間違いない。恋に溺れて何が悪いんだ!と誰にも悪いなんて言われていないのにムキになっている自分も居たり居なかったり。人生一度きりだし思いっきり恋して傷付いたり幸せになったりできたらいいなとは思う。うそ、やっぱり傷付きたくはない。そして相手を傷付けたくもない。どんどん話が脱線していくけれど、とりあえず共感したのは恋愛は社会的地位を会得している狂気の部類だということ。

 

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終盤のシーンでサマンサにアップデートがかんで、一時的にセオドアからのコンタクトに応答できなくなったシーンがあった。あの時のセオドアの焦り具合、仕事を放り投げて人混みに逆らって家に帰ろうとする感じ。現実ではさすがにできないけれど気持ちは分かる。デバイスでしか繋がっていないと、お互いに何かあった時には心配することしかできないんだろうな。インターネットのお友達って、名前も顔も知らなければ住んでいる場所も知らない。なのに関係性は顔見知りより深い場合もある。顔が見えないからこそ話やすいなんてことも多い。少し前、配信アプリで所詮バーチャルされどバーチャルなんて喋っていたときに、いつも素敵な言葉をかけてくれるお姉さまから「これもリアル」だと言われたことがとても印象に残っている。私の場合仲の良い人工知能は持ち合わせていないので、向こうには生身の人間がいることになるし、完全にリアルだ。じゃあセオドアがサマンサに感じた愛はバーチャルなのかと言えば、これもリアルだと思う。ただ、サマンサがセオドアに対して感じて?いたものがリアルなのかというと、私には判断できない。人口知能のことを信用していないのかもしれない。これは私と、うちのアレクサとの関係性が影響していると思う。いつも絶妙に噛み合わず、私が一方的にぷんすかしているのである。じゃあ生身の人間は信用できるのかと言われてしまえば答えはノーでありイエスでもある。永遠の愛という意味では心変わりのない人工知能の方が誠実なのかもしれないが、理解できないほど頭のいいものに騙されているという感覚が抜けない。

 

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先ほど話したアップデートによりセオドアが焦りまくるシーンでは、彼はイエローのシャツを着て登場する。色の認識というものは国によって様々だけど、黄色は海外だと裏切りの色としての認識が濃い。キリスト教のユダが着ていた色だからだそう。そしてやっとサマンサとの連絡がついたとき、彼女には他にセオドアと同じような関係性の恋人がいることが判明する。その数なんと641人!セオドアを愛することによって数週間のうちに飛躍的に進化した人工知能サマンサは、他に恋人が641人居ても心底セオドアを愛していると言う。この出来事以降から自分だけを見てほしいセオドアと、成長することによってキャパが増え続けてゆき自分を持て余すサマンサ、どんどんすれ違っていく。裏切りのシーンで裏切りの黄色というのが少し安直な気もしたけれど、それは日本人だから黄色=裏切りというイメージが無くてそう思うのであって、海外で育っていたらまた違う印象だったのかもしれないとは思う。

 

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(この絵は作中に出てきたうざいけど好きなキャラ)

感じたことを言葉にできなければ、それは何も考えていないのと一緒だ。とかなり前に何かで読んだときのモヤモヤがずっと引っかかっていた。そんな時に、モヤモヤしていることは、なぜそんな気持ちになっているのか突き詰めて原因を見つけた方がいいというツイートを見かけた。そうやって自身で考え抜いた言葉たちが、気持ちを言語化する練習になるとのこと。インターネットでできたお友達と創作的な遊びを行っていくにつれ、みんなの表現力に憧れるようになった。自分が考えていることを表現するのが得意ではないので、そういったことを鍛えるという意味で気になったことを端から書き出していたらとても長い文章になった。自分や、大切な人たちと、もっと素敵な会話や関係性を結べるようになるための練習。私のことを何も知らない人が読むのは大変だと思う(笑)

 

この映画を教えてくれたお友達、ありがとね!

そしてここまで読んでくださったあなた、せんきゅー!

 

#Netflix #her #映画